波瀾万丈50代

50代の転落人生|9話 女性のための法律相談

波瀾万丈50代

実にありえない状況になってしまいましたが、パートとはいえ毎日仕事に出ていたので、この家から離れて仕事をしている間は、唯一現実逃避できたのが救いでした。

先日の家宅捜索の騒動は、近所にも知れてることだとは思いましたが、私が何事もなかったかのように振る舞ってたこともあり、ご近所の方は普通に接してくれました。
この状態がこの先10年続くはずもないと言い聞かせ、我慢していく中で、このあと息子たちの大学卒業、就職、婚約など良いことも重なっていきます。

義父は私達が将来住んでいられるように、自分が〇〇(夫)からこの家を守る、あいつにはこの家は絶対渡さない、遺言書も書いてやると言ってくれました。毎日不安気な私に、あなたは心配することは何もないと言い続けてくれました。

自分の味方になってくれていると勘違いした私は、家族として毎日食事も共にし、時には酔って止まらない話に夜遅くまで付き合ったこともありました。今までは休日の昼食は適当に作っていましたが、土日祝日、また私が仕事が休みの日でも昼食を用意するなど、身の回りのお世話が私の役目となりました。生活費をいただいている以上は仕方のないことでしたが、心身共に休める休日はほとんどありませんでした。

しかし義父との生活は上手くいくはずがありません。一度、掃除の件でやりとりをしていた時、わたしの言葉が意に沿わなかったのでしょうか、胸ぐらを強い力で突き押されました。殴られるのかと思い恐怖で震え上がりました。
元気だった頃の義母がよく義父のDVを訴えていましたが、まさにこのことだと実感しました。私はまだ嫁の立場ですから手加減してこの程度です。この義父の怒りが息子にも飛び火し、その後しばらくこの家の中に険悪なムードが続きます。

こんな状況で精神的にも不安定になり、すがる思いで公共の相談窓口を利用してみることにしました。どこの市町村にも設けられていると思うのですが、男女・夫婦・家族・職場での人間関係や暴力のことなど、女性が抱えるさまざまな問題について、専門の女性カウンセラーが相談に応じてくれる窓口です。

事前に電話予約が必要です。
予約の時間に受付に行くと、奥の小さな個室に案内されます。初めて相談に応じてくれたのは妊娠8ヶ月くらいの優しそうな女性でした。どこから話せばいいか頭の整理がつかないまま、現在の状況を話し始めると、細かなメモをとりながら、私の目をしっかり見て話を聞いてくれました。

特にアドバイスをしてくれるわけではありませんが、他人に話すことにより少し気持ちが楽になります。時折感情的になり、涙があふれてきたときにはそっと手元のティッシュを差し出してくれて、それだけでも人の温かみを感じました。

時間は30分と決めれられていて、結局は私次第で、何か行動を起こす時は女性の弁護士を紹介してくれるということでしたが、少し気持ちが軽くなった気がしました。
ひとつだけアドバイスしてくれたのは、今の状況で離婚届を出してはいけないということ、なぜなら何も離婚の協議をしていないのに離婚届を出したら私が不利な状況になるからです。

私が今の家に住み続けていいことを条件に、自分が家を出たという夫は、離婚分割協議の書面は書かない、年金分割もしないと言い張ります。
しかしこの口約束がただただ不安で仕方ありませんでした。

その後、数回その女性カウンセラーと面談しましたが、産休に入ることになり、今までの話の内容は次の担当者に引き継いでくれるということになりました。そして次に私の相談の担当になったのは、私と同年代の、あらゆる女性問題に向き合ってきました風な、いかにもベテランといった印象の女性でした。

その女性からしたら、私の相談は今すぐ生活に困るほどの切実なものではなかったのかも知れません。
私の同居の義父とのやりとりを聞いたその女性は、
「私が同じ立場なら到底我慢できせんが、あなたは許容範囲が広いのですね。」と何気なく発した言葉だったのでしょうが、私を奇異の目で見ているような気がして、その後はショックで言葉が続きませんでした。
この到底我慢できない状況が辛くて不安でここに来たにもかかわらず、さらに傷ついてしまい相談に来た意味がなくなってしまいました。2度とその法律相談に行くことはありませんでした。

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