波瀾万丈50代

50代の転落人生|7話 決断の時

波瀾万丈50代

義妹家族との同居が始まった義父ですが、またも頻繁にこちらに顔を出すようになってきました。

娘の旦那さんであるお婿さんへの気遣い、年頃の孫娘たちとの生活のリズムのずれや、同居して初めて知る意見の食い違いによる愚痴を吐き出しにやってきたのです。

とうとう娘や孫たちと大げんかをしたからこれ以上耐えられない、この家のリビング部分を自分の部屋にリフォームしてここに住むと言い出したのです。
まだ義妹家族と同居して数ヶ月、どうして10代前半の女の子の孫と喧嘩になるのでしょう。そこが不思議でなりませんでした。
さすがにこの話はあまりにも唐突ということでなくなりましたが、もしここで私達家族と同居となったら、離婚したいと言っている夫の親と私はどうやって向き合っていけば良いのでしょう。夫の思いが外へ向いている以上は同居などできるはずがありません。
しかしまた予期せぬ事態がおこります。

ある日の朝8:00、家のインターホンが鳴ります。私が玄関に出ると恰幅のいい男性が数人家の前に立っています。手に持った1枚の紙と表札の名前を見比べながら「◯◯さんのお宅ですか?」と身を乗り出すように聞いてきました。私は事態が瞬時に飲み込めませんでしたが、背筋が凍りつく思いがしました。家宅捜索が入ったのです。

夫が以前接触のあった女性とのトラブルで被害届が出されていたのです。前触れもなく本当に突然でドラマさながらの光景でした。有無を言わさず家の中に5,6人の私服の警察官が上がり込んで部屋のあちこちを捜索しだしました。私もいくつか事情聴取されました。共犯かどうかの確認です。
たまたま来ていた義父もこの場面に直面しました。

こんな状況に直面したら、一般的には妻というのはよろめいて泣き崩れるのでしょうが、私はその場では毅然としていて、この状況から逃れるように仕事へ出かけてしまいました。しかしその日は平静でいられるはずありません。一日中経験したことのない頻尿という身体の異変を味わいます。
精神的な不安やストレスが原因となって起きる心因性頻尿というのがあるそうですが、尋常ではありませんでした。
なんの因果でしょうか。この日は、奇しくも結婚記念日でした。

以前、その女性とのトラブルの腹いせに「俺に代わって慰謝料請求してくれ」と言われたことがありました。その時点で私は、妻としても女としても、すでに夫からは人格否定されてたも同然です。夫への不信感はマックスに達し、もう無理かなと思った瞬間でした。ゆえに今回の家宅捜索は夫への怒りでいっぱいで、涙も出ません。自分がどれほどの事を犯しているのか自覚をもっていない夫に、社会の秩序を守るこの専門家たちの力を借りたい思いでした。

夫は事情聴取のため連行され、1ヶ月後に戻ってきました。弁護士に依頼しなければ1ヶ月では戻ってこれなかったでしょう。
そして戻ってきた夫には私に対する反省の色はありませんでした。自分が拘留され、命を絶ちたいほど辛かった時に私が助けにきてくれなかったというのです。そしてどのように連絡をとったか知りませんが、助けにきてくれた優しい女性を守っていきたいと言うのです。ずっと女性と本気の交際が続いていたことも衝撃でした。

回りに心配や迷惑をかけていたことは二の次で、自殺するほど辛かった自分自身を助けてくれなかったというこの私はその女と天秤にかけられていました。20年以上積み上げてきた結婚生活は少しの重みもありませんでした。私はやっと離婚を決断します。

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